ウーバーと滴滴出行の口車は日本で通用するか?

ウーバーと滴滴出行(ディディチューシン)の口車は日本で通用するか?

サウスチャイナモーニングポスト紙に本年8月28日に上記タイトルでこんな記事が出ました。

市民会議の責任で翻訳しました。以下記事の訳文です。

東京は、ライドシェアを禁止しているし、世界に冠たる交通システムがあるので、そうしたサービスへの需要はそもそも低い。にも関わらず、ウーバーや滴滴出行は、世界第3位の経済大国・日本で足がかりを探っている。

たとえ、日本で最も裕福な実業家であっても、人生で上手くいかないことがある。

ソフトバンクグループ会長兼社長である孫正義もその一人だ。220億ドルの資産を持ち、フォーブス誌の長者番付では最近トップに立った。けれども、そうした財力と影響力があっても、思い通りにいかないことはある。少なくとも、ライドシェアがそうだ。

「ライドシェアは、日本で違法。こんなばかな国がいまだあるとは、信じられない」。今年61歳になった孫は最近、ソフトバンクの定例イベントでそう言った。

何が孫をイライラさせているのか、一目瞭然だ。ソフトバンクの投資部門であり、約1兆ドルを運用する「ビジョンファンド」は、サンフランシスコに本社を置くウーバー、中国の滴滴出行、インドのオラ、ブラジルの99、シンガポールから東南アジアに進出するグラブなど、さまざまなライドシェア企業に出資をしてきているのだ。

しかし、孫の生まれた国であり、世界第三位の経済大国である日本が、ライドシェア禁止を解かない限り、日本での孫の実績はあまり目立たないものとなってしまう。現時点では、ウーバーと滴滴のサービスは、営業許可を持つタクシー会社の配車アプリの提供に限定されている。自家用車をタクシーとして使うことがライドシェアの大前提だが、これは日本では禁止されているのだ。

孫にとっては残念なことだが、日本政府が早々にそのスタンスを変えることはなさそうだ。国土交通省は、安全確保の見地からこの禁止は必要だという立場であり、その理由としてライドシェア車両の運行・管理について誰が責任をとるのか不透明な部分があると指摘する。

おそらく、日本のライドシェア禁止は、そんなに「ばかなこと」ではないのだ。

実際、日本には世界有数の公共交通システムがある。新幹線や縦横無尽に走る地下鉄路線と鉄道のネットワークは、毎日800万人を輸送するし、バス輸送も快適で運賃も手ごろだ。

日本のタクシーも、サービス・安全の両面で世界最高レベルにあり、乗客がキャシュレスで支払いできるシステムをすでに導入している。地下鉄も効率的で、夜遅くまで運行しており、零時を過ぎても働く多くのサラリーマンの足となっている。

こうしたことをまとめてみると、ライドシェアの魅力は日本であまり発揮されないことになる。ただし、本紙 - This Week in Asia - のインタビューに応じた通勤客、外国人、観光客は、ライドシェアが地方や65歳以上の年齢層には魅力的かも知れないと答えている。日本の人口の四分の一が、65歳以上だ。

「大阪では、だいたいどこでも公共交通があり、電車やバスが数分おきに来るので、ここにいる限りウーバーは必要ない」と、ホステルに勤務するヒラヤマ・クミは言う。「なかには便利さを求め、早く移動するために余分なお金を出す人もいるでしょう。タクシーは料金がちょっと高いので」。

足立区竹ノ塚に住むサイトウ・マコトも、運賃が安い地下鉄があるので、ライドシェアの必要性をあまり感じていない。「でも地方は公共交通が発展しておらず、クルマを運転できないお年寄りもいる。そうした人たちにライドシェアがあれば、生活はもっと快適になるのでは」。

ウーバーなどの各社は、こうしたライドシェアの禁止や伸びない需要にめげず、一部のタクシー会社と提携して日本での足がかりをつくろうとしている。兵庫県の淡路島は人口15万人だが、地元のタクシー会社20社強*が、ウーバーによるアプリ配車の実証実験に参加している。この実験は、来年3月まで続く。(*訳注:実際は、タクシー会社9社40台)

ウーバーはまた、東京でも専業ハイヤーとして営業中で、予約料金1080円をとる高級サービスのウーバーブラック(Uber Black) やウーバーブラックバン(Uber Black Van)を提供している。6つの都市では、食事配達のウーバーイーツを手がけ、京丹後と中頓別(*訳注:いずれも地方の公共交通空白地)では実験的に高齢者向けのタクシー配車サービスを実施している。

いっぽう、滴滴とソフトバンクは先月、AIを使ったオンデマンド式のタクシー配車サービスを提供する合弁事業を立ち上げた。集客対象は、増え続ける中国人観光客、高齢者ならびに2020年の東京五輪で来日する観光客だ。サービスは今秋から大阪で始まり、京都、福岡、沖縄、東京などの主要都市へ徐々に広げていく計画とのこと。

国際観光振興機構によれば、2012年から2017年の間、中国人観光客は毎年34%増えている。これは、滴滴にとって潜在的な大市場だ。

160億ドル市場である日本のタクシー産業の分け前を狙っているのは、ウーバーと滴滴だけではない。ソニーも、タクシー会社5社とAIを使った配車システムを開発すると発表している。いっぽうトヨタは、6900万ドルをジャパンタクシーに出資した。ジャパンタクシーは、車両6万台を有する日本一のタクシー会社である日本交通が運営するタクシー配車アプリの事業会社だ。

AIなどの最新技術を導入すれば、タクシー会社の収益は上がるかも知れない。しかし、国がライドシェア禁止を再検討しない中、それだけでウーバーや滴滴が現状を打破できるかは別問題だ。

東京在住のニュージーランド人、コール・カマルトンのように多くの人たちは、ライドシェアが本当に必要なのか確信を持てずにいる。

「東京でのタクシー利用は限られており、だいたいは終電の後に帰宅する時です。あるいは、天気が悪い時」と彼は言う。「東京でタクシーを使うのは、ちょっと贅沢をする時とか、普段とは別な方法で移動したい時。東京の場合、ウーバーを便利なものというのは、誇張があります」。

あれだけの財力と影響力を持ちながらも、日本で一番金を持つ男のイライラはこの先も続きそうだ。

【原文】

Can Uber and Didi Chuxing Take Japan for a Ride?

By Resty Woro Yuniar

27 August 2018

"This Week In Asia" - South China Morning Press

(市民会議の解説)

ライドシェアをめぐる日本の2018年8月末時点の状況を的確に解説する記事と評価できます。日本のメディアは遅れていますね。本当に孫さんは、今のままの路線でいくと大損すると思います。なお、サウスチャイナモーニングポスト紙は中国南部の一般紙。

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