ニューヨーク市、ライドシェア台数規制に動く

ニューヨーク市は全米で初めて「ライドシェア」規制に動き出すが、これを実現した運動の原動力となったのが、ニューヨークタクシーワーカーズアライアンス(NYTWA)。進歩系雑誌 In These Times は、市長が条例に署名した直後に、NYTWAのバイラビ・デサイ代表にインタビューし、運動の背景や今後の抱負を尋ねた。以下、Meet the Militant Taxi Drivers Union that Just Defeated Uber and Lyftの全文和訳。

闘うタクシー労働者の組合、ウーバーとリフトを打ち破る

クリス・ブルックス

ニューヨークタクシー労働者連盟(NYTWA)は、ケンカの仕方を知っている。

ニューヨーク市でハイタク労働者を組織するこの組合は小さいが戦闘的で、8月14日、歴史的な条例を実現し、ライドシェア企業の車両台数規制と実質的な運転手の最低賃金の保障を全米で初めて勝ち取った

NYTWAが闘った相手は巨大企業のウーバーやリフトで、そのロビイスト数は、アマゾン、ウォルマート、マイクロソフトが雇うものをまとめた数よりも多い。

ウーバーだけでも今年1月から6月までの間、NYTWAの運動にブレーキをかけようと、100万ドルを使った。

それも当然だ。ニューヨーク市はウーバーにとって米国最大の市場であり、ウーバーやリフトの車両台数は、2万5千台だった2015年から2018年には8万台へ急増している。

両社とも運転手を労働者と見なさず、「独立事業者」と規定してきたため、社会保障費や所得税の支払いを免れてきた上、運転手から最低賃金・時間外手当の保障や結社の自由・団体交渉の権利を奪ってきた。ニューヨーク市が委託した最近の調査では、同市の配車アプリ運転手の85%の収入が最低賃金以下だった。

こうしたライドシェア企業はまた、タクシー運転手の生活を悲惨なものにした。ウーバーやリフトの車両台数が増加したため、タクシーメダリオン(営業許可証)の価格は下落。かつては、中流をめざす勤労者層の貴重な資産であり、100万ドルで取引されていたが、今は20万ドルだ。

規制なく成長するライドシェア企業によって絶望したニューヨークの運転手たち6人がこの間、自ら命を絶ってきた。彼らの名前は、アブダル・サレーへ(Abdul Saleh)、ユー・メイン・ケニー・チョウ(Yu Mein Kenny Chow)、ニカーノ・オチソール(Nicano Ochisor)、ダニーロ・コーポラン・カスティーロ(Danilo Corporan Castillo)、アルフレード・ぺレズ(Afredo Perez)、ダグラス・シフター(Douglas Schifter)だ。

私は、市議会が条例を可決したあと、NYTWAのバイラビ・デサイ代表(Executive Director)に面会インタビューし、今回の勝利や新しい条例が運転手たちに何を意味するのか尋ねた。

ニューヨーク市は、ハイヤー車の台数を全米で初めて規制しました。この条例によって何が起きるのですか? なぜ条例は重要なのですか?

この条例は最長で一年間、ハイヤー車両の台数を頭打ちにします。つまり、(同市でハイヤーとして登録されている)ウーバーやリフトは、新規の車両申請ができないことになり、これまで無チェックだった各社の増車がとまることになります。市はまた、入念な調査をこの先一年間実施します。その仕上げとして、規制を設ける権限がタクシー・リムジン委員会(TLC)に与えられています。

どのような規制を望みますか?

今の時点で答えるのは難しいのですが、TLCはハイヤー車の台数を恒久的に制限してもいいのではないでしょうか。みなが納得する形で、ハイヤー台数を恒久的に規制することが重要です。つまり、誰もが生活できる収入を得て、今のような底辺への競争をとめ、配車アプリ運転手だけでなく、産業で働くすべての運転手の基準を向上させるような形です。

市議会が、この問題を緊急の課題ととらえたのは、6人の運転手が自殺したためと考えて良いのでしょうか?この規制によって命が救われるのでしょうか?

ウーバーやリフトだけを見ていてもだめです。この三年間、何が起きていたかというと、タクシー運転手たちは、目に見えない存在になってしまったと感じていたのです。自殺した6人の運転手たちは、イエローキャブや一般向けあるいは法人向けのハイヤーを運転していました。彼らを絶望させた理由の一つは、悪化するその生活を政治家やコミュニティが見ていないということでした。

自殺した一人であるダグラス・シフターは、ギグ経済を厳しく批判した遺書を書き残しています。彼は、市庁舎前で(拳銃)自殺したのですが、その内容は強烈です。ハイヤー車の氾濫によって彼ら運転手たちが先を争って金を稼ぎ、どうにか家族を養い、住むところを確保しようとした姿を描きました。彼の悲話が、この闘いに人の血を通わせたのです。

この三年間、ウーバーやリフトは社会的意識の高い企業として振舞ってきましたが、同時に運転手たちは目に見えない存在として放置していました。もちろんそれは意図的なことでした。いずれは自動運転車にしたかったのですから。私たちが勝ち取った最も重要な地平の一つは、運転手たちを前面に押し出したことです。目に見えるこの産業の顔として、さらにはライドシェア企業に規制をかける運動の顔としてです。

私たちはまた、メンタルヘルスの対策も進めています。運転手たちは私たちのビラを見て、NYTWAがこの産業を変えていくために闘っており、彼らも無力でないと理解してくれます。同時に、私たちは破産問題に関する情報を提供したり、ビラに必ず自殺ホットラインの電話番号を記載します。本当は、労働組合がこんな状況で運動を進めることは、あってはならないことなのです。精神的な面で学ぶことの多い闘いでした。

それはどういうことですか?

愛する人を自殺で失った遺族にとって、それは個人的な悲しみであり、自殺とは多くの場合、社会的にはプライベートにしておくものであるにもかかわらず、6人の遺族は一番苦しい時に、その経験を公けにし、気丈に振舞ったのです。

私は貧しく育ったので、運動として経済的に闘っても、必ず食卓に食べ物が並ぶ保障がないことを知っています。しかし、今回の運動は文字どおり私たちの組合員が生きるための希望を与えるものだったので、失敗は絶対に許されませんでした。

NYTWAの取り組みによって、配車アプリ運転手の最低賃金を規制する条例も初めてできるのですね?

そのとおりです。ハイヤー車の台数を規制しただけではなく、初めて配車アプリ運転手の最低賃金の必要条件を確立しました。これにより、ライドシェア企業は運転手に払う料金をどんどん引き下げることはできなくなります。タクシー・リムジン委員会(TLC)が、ルールをつくり料金を決めることになりますが、そこには運転手の諸経費の支出や生活できる手取り収入を得る権利が検討されることになります。

原案は、ニューヨーク州最賃を上限とする内容だったので、文言を変更するよう闘い、ライドシェア各社が運賃収入からより多くの利益を計上した場合、運転手の収入も上がるように修正しました。長期的には、例えば運賃の8割を運転手が得ることができるよう、手数料を規制する制度がほしいと思っています。

今回の条例はまた、12ヵ月の調査に基づき、配車アプリ運賃を規制する権限をTLCに与えました。運賃が無規制である限り、ライドシェア各社は料金を下げることができます。そうなると、競合するタクシーやハイヤーの運転手たちは、自分たちの賃金が上がったら、ウーバーやリフトは料金を下げて対抗すると心配します。私たちは、すべての運転手の賃金が上がるよう闘い、それを可能にする条例を勝ち取ったのです。

市議会は、メダリオンを所有する運転手たちの負債や破産を調査する条例案をいま審議しています。調査を通じて、基金を設けたり、利子を下げる方策を市議会が実行できるよう勧告します。

こうした経済要求はすべて私たちの政策でした。

NYTWAは、市議会でこうした大きな勝利を収めたわけですが、ニューヨーク州失業保険不服審査委員会では、ウーバー運転手は労働者であり独立事業者ではないという判断をしました。これについて、お話し下さい。

私たちは、この委員会でウーバーとリフトに勝ち、さらに市議会でも勝利しました。両社は世界的にもたいへん評価額の高い企業です。ウォール街から物凄いお金が投資されます。ですから、労働界で多くの人たちがそこで働くものを組織することはできないし、このような企業に挑むなど無理なことだと言ってきました。ところがどうでしょう、様々な背景の人間が集まる私たちの集団が、現場で働くものが先頭に立つ草の根運動を通じて、勝ったのです。妥協することを拒み、絶対に諦めなかったからです。

この判決はたいへん重要です。なぜならこれまでこうした企業は、まちを運転手で過飽和させても、何もとがめられなかったからです。ウーバーは運転手が「独立事業者」だと主張してきたため、失業保険費を負担しませんでしたし、運転手たちもその需給の資格があると思っていませんでした。

もし、ウーバーとリフトが今後失業保険費を負担し、生活の収支が合わない運転手すべてが失業保険金をもらうようになったら、これまでの利益獲得戦略は大きな方向修正を余儀なくされます。市場を過剰供給にするのが容易いのは、ウーバーにとって運転手は労働者でなかったからです。労働者とみなされれば、税金を納める必要があり、大きな費用負担となります。

ウーバーやリフトのビジネスモデルの核心は、被雇用者性の否定、車両の供給過剰、運賃の規制緩和です。同時にそれは、ハイタク運転手を困窮させた原因でもありました。

独立運転手ギルド(IDG)からの反応は? この組織はウーバーからの資金で成り立っていますから、運転手が労働者と認められれば、会社に支配された違法労組となりますね?

彼らは、ウーバーの一団です。規制を私たちが勝ち取ると見るや、寝返りし「支持する」と言いました。しかしまた、今の市議会の勢いがとまってほしいとも言っています。彼らは二週間前まで、TLCは最低賃金の要件だけつくれば良いと主張していました。

つまり当初は台数規制に反対だった?

彼らは、反対でした。そして、ジョン・ケリーのように転向したのです。それまで反対だったけれども、賛成に回った。(ベトナム帰還兵として反戦運動に転じながらもその後政治家になった)ケリーもそうでしたよね。

NYTWAに対してウーバーは、7ケタ予算のPRキャンペーンを展開し、タクシー運転手の偏見とか乗車拒否という、黒人コミュニティが抱えて当然の不満を強調しました。 ウーバーはまた、著名な黒人リーダーであるアル・シャープトンやスパイク・リーから、規制反対の賛同を得ました。こうした批判にどう応えますか? そうした問題にどう取り組んでいきますか?

ウーバーがいかにご都合主義的に振舞うのか、今回みなよくわかりました。ウーバーは自分たちの会社の利害のために、主として有色人種で構成される移民社会からアフリカ系の人たちを分断し、なぜか市民の権利と働くものの経済的公正は関連していないというお話を作り上げたのです。

私たちはこの策略を打ち破ることができました。なぜなら、何ヵ月も前から有色人種の市議会議員たちと対話を重ね、「市民の権利イニシアチブ9ヵ条」をつくったからです。正式に条例へは盛り込まれませんでしたが、職業訓練、ライセンス更新要件、更新教習、社会福祉活動に加え、イエローキャブ用アプリの技術開発などを管轄する部署がTLCに設けられます。

市民権を強調することは、条例を市議会で成立させた運動にも、条例そのものにも反映されていたと思います。「みんなのためのタクシー連合」は、多数の身体障害者グループが参加し、集会にも大勢やってきました。そして、新条例でも車椅子がアクセスできるハイヤー車両は規制の対象から外されています。つまり、これは台数制限ではなく、もっと(身障者が)アクセスできるよう業界に迫る規制なのだと言えませんか?

みんなのためのタクシー連合(Taxis for All Campaign)は、すごかった。この団体とはもう10 年以上協力関係にあります。一緒に運動をし、2020年までにイエローキャブの5割を車椅子アクセス車両にすることを義務化させた法律をつくりました。彼らは一貫して私たちのキャンペーンを支持してくれました。素晴らしい人たちです。

ニューヨークは、世界的な大都市にもかかわらず、こうしたサービスはしかるべきレベルに達していません。ウーバーとリフトは、熱心に車椅子アクセスや点字標識の設置に反対します。タクシーは、点字標識を守らなくてはなりません。

あまり大げさには言いたくありませんが、このアクセスの問題については、配車アプリ会社もこうした基準を守ることが必要であると、市議会が確認したと思います。もちろん配車アプリ会社はこの基準に反対し、IDGをそのために使いました。IDGは、運転手の負担が増えるから、TLCがアクセスを義務化することに反対だと言いました。でもなぜ会社と闘い、運転手の負担を軽減させないのでしょうか。 なぜ、IDGはすべてのコストは運転手が負担して当たり前だと思うのでしょうか。

タクシー産業で、運転手は独立事業者と見なされていますから、私たちはこれまでTLCレベルの規制に標準を合わせてきました。1997年以来、運転手が負担しなくてはならない様々な費用に上限を設けました。2012年には、運転手が車両に対して支払う費用に上限を設けました。私たちは、こうしたコストが運転手にのしかかることを、当然のこととは見なしませんでした。

この産業で働くものを横断的に組織すべきだと確信していたからこそ、こうした勝利を勝ち取ったのです。私たちがどこまでできるのか、決めるのは経営者ではありません。働くものを組織することで、新たな要求も勝ち取ることができるのです。

はじめから、ウーバーやリフトに規制はかけられないという考えを私たちは受け入れませんでした。なぜなら、既得権益が根深い(タクシーという)メダリオン産業を変えてきたからです。

そこで変革が可能であれば、ライドシェア企業も変えられると信じて良いではないですか。

振り返っても、2万1千人の組合がニューヨークで、700億ドル企業に挑んだということはすごいことでしたね?

昨年11月より、私たちは20回以上のアクションを繰り広げてきました。市議会に初めて書簡を送ったのはなんと今年4月です。彼らは、私たちの闘いを目の当たりにし、デモのポスターから私たちの政策を知りました。市議会の11項目一括法案は、私たちの要求リストそのものです。ハイヤー産業の略奪的なリースシステムを禁止する規制は全米初となりますが、タクシー産業ではすでに勝ち取っているものです。この産業で横断的に適用される健康給付基金の設立もあります。街頭で行動したのは、これが社会的な闘いとなるとわかっていたからです。

私たちのメンバーは、休みを取る分だけ収入が減ります。イエローキャブ運転手の諸経費は、多額な支出です。働いていない時間は、収入を失う時間です。それでも、こうした男たち・女たちは幾度となく私たちの動員に家族と共に参加してくれました。その情熱があったからこそ、私たちは勝ったのです。

原文

Meet the Militant Taxi Drivers Union That Just Defeated Uber and Lyft

by Chris Brooks

August 15, 2018

In These Times

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